Vol.142|恋する照明学

光を使って自分を魅せる時代
投稿日:2018,07,06
photo by henry…

みなさん、恋していますか?

「恋」というと、どんなイメージを抱きますか? 一般には、他者への募る恋心を思い浮かべますよね・・・例えば、女性なら恋をすることで綺麗になった・・・なんてね! しかし、最近はこれがちょっと変わってきているようなのです。いまどきは、恋は自分にするものなのだそうです!?? そう、街に出れば、カフェで、広場で、バス停で、あるいは海で、夜景スポットで、みんなが夢中になっているのはセルフィー、つまりスマートフォンでの自撮りです。それはいかに自分を可愛く、かっこよく見せるか、そして素敵に生きているかをスマートフォンのディスプレイ越しに確認し、それをイイ感じに加工してSNSにアップする・・・、自己満足かもしれませんが、まさにそんな“自分に恋する”時代なのではないかとおっしゃる方がいます。

今回のテーマは、そんな自分に恋するみなさまに贈る、光や照明の取り扱い方を書いてみたいと思います。



その1 ブルーモーメントよりも茜空を

photo by resa cahya on Unsplash

光のソムリエでは自然界における美しい光の時間帯としてブルーモーメントをこれまでに何度もご紹介してまいりました。それは太陽が地平線に落ちた後、オレンジ色だった空全体が青い光に満たされる特別な時間帯のことで、北欧では毎日数時間見ることができる美しい光の現象です。日本では日没後の10分から15分程度しかみられないことから、このブルーモーメントを知らない方も多いかもしれません。

ところで、セルフィーする場合なのですが、ブルーモーメントの時の自撮りはお勧めできません! 顔が暗く血色悪く映るだけになってしまうからです。屋外の自撮りの場合ですが、日没の直前から直後にかけて、オレンジからピンクへ変わる茜空の光で撮ったほうが、顔が紅潮して可愛らしく撮れるので、自分に恋できる素敵な写真に仕上がるでしょう。

もし、どうしてもブルーモーメントを撮りたいならば、ブルーモーメントの青い空を背景にして、自分とカメラの間にキャンドルや暖かい色味のスタンドなどを置くことをおすすめします。こう設えれば、神秘的なブルーバックと共に、お顔は少し紅潮して美しく写真に収められるでしょう。



その2 イルミネーションを“観る自分”を撮る

さて、次にご紹介するのは夜の街。今では、冬の時期に限らずキラキラと、イルミネーション装飾が行われるようになってきました。イルミネーションを背景に自撮りすれば、背景に煌めく光が映って楽しそうな写真になるのでしょうが、自分に恋する照明学的には、イルミネーションを観ている自分を撮ることをおすすめします。

この技法は、“キャッチアイ”と呼ばれるカメラの撮影テクニックからヒントを得たものです。 これはアイドルや女優さんをプロのカメラマンが撮影する時に、瞳に煌めく星のような光が入るように照明をセッティングするテクニックのことなのです。

この照明技法で撮影すると、瞳にキラーン!と星が入ったような、溌剌としたイメージの写真が生まれるのです。これを応用して、イルミネーションを見ている自分の顔をアップで撮ると、瞳の中にキラキラ輝くイルミネーションが映り込み素敵な自分に仕上がるという訳なのです。



その3 レストランで “自分”を撮る

イルミネーションを観たあとはレストランで食事でも・・・となったら、これまたチャンスです。テーブル席の上には大抵ダウンライトが備え付けられていますが、必ずそのライトが自分に45度くらいの角度であたる席を確保するのです。そして自分の自信のある側だけにライトを当てると、お顔の半分にちょうどシャドウがかかって俳優さん、女優さんのように美しく見えてまいります。その瞬間をパチってみてください。

間違っても、照明の真下の席には絶対に座らないでくださいね! この席は、お顔に残念な影がたくさんできてしまい、せっかくの美しいお顔も不細工に見えてしまうのです。さらに欲を言えば、白いリネンのクロスがあれば下方向からも光を回してくれるので、なお一層、美しく見せてくれるでしょう。



大型ヴィジョンを見つけたら・・・ライオンキングになれ!

最近、大型LEDヴィジョンを都市部でよく見かけるようになりましたが、夜に通りかかったら是非大型ヴィジョンを背に逆光の状態で自分を写してみてください。明るい大画面の前に立つ姿・・・これは照明業界でいう“サバンナ効果”と呼ばれる技法です。その名の通りアフリカのサバンナの夕焼け空を背景に動物たちのシルエットが浮かび上がる・・・なんか劇団四季のライオンキングを彷彿させるロマンチックな自撮りになるはずです。できるだけ下のほうからあおり気味の構図がよいかもしれません!

このほかにも、沢山の技法が応用可能なのですが、まずは、ご紹介した4つのテクニックを駆使してみてください。そしてソーシャルメディア上での映り映えを楽しんでくださいませ!

自分に恋する照明学! 少し大げさなタイトルだったかもしれませんが、毎日の時間をより楽しいもの、良い時間にするために・・・このような照明の役割にも期待して、楽しんでもらうことも、私は大切だと考えているのです。
さぁ、暑い昼間の時間が過ぎて、少し涼しくなったころ、街へ出て照明と戯れる時を楽しんでみましょう!

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PROFILE
東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に有限会社ライトデザインを銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。




Vol.141
Vol.141 照明のインフルエンサー?

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Vol.142 恋する照明学

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