Vol.110|歌ごころ、そして照明ごころ

心に響く光
投稿日:2016,11.14
photo by Steffi Njoh Monny

感動を与えるもの

私たちは日常生活の中で、心を打たれる体験をすることがあります。心打たれる・・・これはいったいどんな時なのか? 照明で心打たれることがあるならば、照明デザイナーはどのように作ればよいのか? 今回は冬に変わる季節の中で「心を打つ」をテーマにブログを書いてみたいと思います。こんなことを考えていたら、偶然にも音楽関連ブログの中に、次のようなフレーズを見つけました。
 
それは、 “音楽で大切なことは歌心を培うこと”だというのです。感性を表現するのは、歌う音程や演奏の正確さではなく“歌心”であるというのです。これを照明デザインに当てはめて考えると、照明デザインで大切なことは照明心(しょうめいごころ)という事になりそうですね・・・。
 
確かに、照明もリラックスできる色温度が何ケルビン、照度何ルクス・・・と設定しただけで、心に沁みる光空間が出来るわけでもないでしょう。見る人の心を打つ照明、照明心とは何なのか?について考えてみることにしました。

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Vol.109|仕事の流儀を考える

キーワードは、”一生、遊べる。”
投稿日:2016,10,27
photo by LIGHTDESIGN INC.

レセプションパーティーにて

照明デザイナーの仕事現場は多岐に渡りますが、それが新たにオープンする飲食店であれば、開店の予行練習を兼ねてお披露目のパーティーが行われることが慣習となり、そんな素敵な時間をご褒美として与えられることがあります。また、そこに招かれると、その店づくりの関わる様々な職種のプロフェッショナルな方々にお会いして話をする楽しい機会を得るのです。

実は先日も、照明を担当させていただいた京都の飲食店のオープニングレセプションに伺ったところ、非常に面白い、そしてとても印象的な言葉を発する若者と出会うことができました。本日はこのときの様子と共に、その若者とその言葉についてご紹介したいと思います。

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Vol.108|黄昏時はどんな時?

人の気持ちと明るさの関係
投稿日:2016,10,7
photo by BeckyEtal

話題のアニメ映画のシーンより

この夏、話題となったアニメーション映画「君の名は。」という作品があります。あまりアニメーション映画を観ない私ですが、そのストーリー内で描かれているエピソードが照明的に大変興味をそそられたので、ここでご紹介させていただきたいと思います。それは主人公である高校生が受けている学校の授業でのこと、先生が万葉集のある和歌を紹介すると共に、その中に使われている言葉が現在の「黄昏時(たそがれどき)」という言葉のもととなっていると説明するというシーンです。

た・そ・が・れ・ど・き、、、この言葉なのですが、普段はあまり口にしない言葉かもしれません。しかし、日本語の歌詞ではよく耳にしているでしょう? さて、みなさんは黄昏時と言われて、どんな時や情景をイメージするでしょうか? 今回は、その和歌を読み解きながら、黄昏について考えてみたいと思います。

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Vol.107|照明に欠かせない“アソビ”

照明に欠かせない”アソビ”
投稿日:2016,09,28
photo by Julien REBOULET

“アソビ”とは?

こんにちは、東海林弘靖です。今回のブログは照明における“遊び”について考えてみたいと思います。
しかし、これは「どこかで友人と楽しく遊ぶ」のあそびではなく、自動車などのアクセルやブレーキに与えられた「余裕のある動き」を示すあそびのことなのです。通常私たちが乗る自動車は、アクセルを踏むとすぐに反応して車が加速するわけではなく、ある程度踏み込んだあたりから動き出すように調整されています。この、“ある程度の踏み込み部分”がいわゆる遊びと呼ばれるものなのです。

私たち一般の運転者はF1レーサーのような1ミリ単位での踏み分けるアクセル技術がないので、アクセルを踏んでも車が即座に動かない「遊び」があることで、「ついうっかり・・・」という事故を回避するために非常に重要な工夫となっているのです。そんな遊びと呼ばれる、必要不可欠なゆとりですが、さて照明デザインにおいては、どのような遊びがあるのでしょうか?

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Vol.106|トイレ照明が面白い

トイレ空間のあるべき姿とは?
投稿日:2016,09.16
photo by Kristina D.C. Hoeppner

シドニーからの便り

先日、オーストラリア在住の友人から非常に興味深い写真が届きました。それは、世界遺産として有名な近代建築、シドニーのオペラハウスで撮影されたものでした。シドニーのオペラハウスと言えば、思い浮かぶのは貝殻のような白い屋根の連なった外観が有名だと思いますが、届いたのはその姿ではなく、建物のなかにあるトイレの写真でした。何でも、オペラハウスを訪ねた時にトイレに行ったところ、その個室空間がとても印象的だったので思わず写真に撮って送ったというのです。(上記は個室の手前にある手洗いスペースです。)確かに写真を見ると、なかなか他にはないしつらえだと感じると同時に、楽しい様々なイメージが溢れてまいりました。今回はそんなトイレの照明についてお話したいと思います。

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Vol.105|照明リテラシー

照明を読み解く力
投稿日:2016,08,26
photo by Moyan Brenn

リテラシーとは?

最近、リテラシーという言葉を耳にすることが多くなりました。英語のLiteracyのことなのですが、調べてみると、読み書き能力とか、識字、教養といった意味になるようです。現代では、そこから転じて「ある分野や対象などについて、基本的な知識や技能などを身につけ、その分野の文書を読み書きしたり、対象を適切に活用できる基礎的能力のこと」(情報元:IT情報辞典)を示すようになったそうです。例えば、メディアリテラシーだとか、金融リテラシー、情報リテラシーなどと、使うようです。確かに物事の読み解く力はとても大事なことです。そんな訳で、光のソムリエとしては、照明リテラシーを考えてみたいと思います。

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Vol.104|8月12日からの展覧会

照明のテーマは人間の身体と心
投稿日:2016,08,05

5年ぶりの展覧会

本日のブログは、8月12日(金)から8月20日(土)まで開催する、ライトデザインの展覧会についてご紹介いたしましょう。期間中は銀座のLIGHTDESIGNスタジオと、そこから徒歩1分ほど離れた奧野ビルにあるギャラリー巷房の2カ所を会場として、オムニバス形式で2つの展覧会を同時開催します。

全体のテーマは「human being」、つまり人間、を照明のテーマに掲げています。ひとことで人間をテーマにした照明といっても、「何のことか分からない」、もしくは「そんなの当り前じゃないか」というご意見をいただくかもしれません。そこで、「ユーザーエクスペリエンスデザイン」という言葉を用いてもうすこし丁寧に展覧会の趣旨をご説明していきたいと思います。

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Vol.103|照明と夜と経済の関係?

祭りは夜に・・・
投稿日:2016,07,28
フランクフルトのルミナーレ会場より Source - Messe Frankfurt Exhibition GmbH / Jochen Gunther

照明を使って

先日ニューヨークタイムズの紙面に、面白いニュースを見つけました。タイトルには「2,000 Pigeons Will Put on a Light Show in Brooklyn」とありました。これはブルックリンにあるNavy Yard(海軍工廠)で開催されたアートイベント時に、2000羽以上の伝書鳩の脚に小さなLEDを付けて、夜空に飛ばせるというショーが行われたというものです。何という大胆な発想なのでしょう! いったい鳩はどんな気持ちで飛んで行ったのか? などと心配する反面、その光景はさぞかし壮大であったに違いないと思うのです。光がウェアラブルになった先には、鳩にも装着するという時代になったのか!と感慨深いものさえ覚える記事でした。

ところで、これまで平和のシンボルである鳩が一斉に放たれるシーンは、概ね昼間だったのでしょうが、夜間にイベントを開催しそれに光が伴っている・・・いや、光が際立つから夜間のイベントを行うのか? 今回は、イベントと夜の価値について少しばかり考察してみたいと思います。

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Vol.102|デザインのシンプル化

無駄をそぎ落とす技術
投稿日:2016,07,18
博多グリーンホテル1号館(福岡) photo by Akito Goto

Webサイトデザインの動向

最近、Webサイトデザインは「フラットデザイン」というのがトレンドというのを耳にしました。これはリッチデザインと呼ばれる紙の質感を再現したようなデザインとは逆、その名のとおりフラット=平坦な無駄をそぎ落としたようなデザインのことで、主な例としてはグーグルのトップページやiPhoneの画面のようなデザインがこれにあたるそうです。聞くところによると、インターネットが一般的に使われるようになった90年代から様々な変化を経たのち、今の結果にたどり着いたということのようです。これは私の照明デザインでも少し似たようなところがあるとも言えるのではないかと思います。そこで今回はデザインのシンプル化について考えてみました。

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Vol.101|イタリア発の注目デイライト照明

太陽が欲しい!
投稿日:2016,06,24
photo by Athena Iluz

梅雨の季節に考える光

東京はちょうど雨の季節です。雨に濡れた紫陽花の風流なイメージは良いのですが、一日中雨が降っているのを見るのは少々陰鬱な気分になってしまいます。さて今日は、こんな季節に考える自然光の話をしてみたいと思います。

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PROFILE
東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に有限会社ライトデザインを銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。





Vol.101
Vol.101 イタリア発の注目デイライト照明

Vol.102
Vol.102 デザインのシンプル化

Vol.103
Vol.103 照明と夜と経済の関係?

Vol.104
Vol.104 8月12日からの展覧会

Vol.105
Vol.105 照明リテラシー

Vol.106
Vol.106 トイレ照明が面白い

Vol.107
Vol.107 照明に欠かせない“アソビ”

Vol.108
Vol.108 黄昏時はどんな時?

Vol.109
Vol.109 仕事の流儀を考える

Vol.110
Vol.110 歌ごころ、そして照明ごころ


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