Vol.121|照明デザイナーが案内する東京ナイトツアー

東京は夜こそ面白い
投稿日:2017,04,26
photo by Zengame

ライティング・フェア2017にて

去る3月7日から10日までの4日間、東京ビッグサイトにて「ライティング・フェア2017」が開催されました。これは2年に1度開催される照明の総合見本市で、今年は4日間で7万人を超える来場者があったとのことです。光のソムリエでは前回の開催(2年前)から私も所属する日本国際照明デザイナーズ協会(IALD Japan)がこのイベントに全面協力することになったとご報告しておりましたが、今年はその体制での2回目の開催、更なる面白い企画を実施することになったのです。今日はその特筆すべき面白いイベント「アフターダークツアー」をレポートします。



新たな試み

開会式の様子 出典:日経メッセ

期間中、東京ビッグサイトでは各照明メーカーの展示ブースが並ぶ見本市だけでなく、特設ステージにて照明業界関係者によるレクチュアが行われ、また、特別に設えられたセミナー会場では同時通訳付きの「照明デザイン国際セミナー」が開催されました。こちらは、イギリス、アメリカ、ロシア、スエ―デン、インドなどからゲストを迎え、聴きごたえのあるセミナーとなったのです・・・と、ここまでは前回と同様なのですが、今回は見本市が夕方5時で終了した後の暗くなってからの場外イベントを考えました。つまり、After Dark Tour・・・照明デザイナーと行く夜の街歩きイベントだったのです。



“照明デザイナーと夜の街ぶら!”

この見出しはアフターダークツアーのサブタイトルで、イベントはまさに照明デザイナーが参加者と一緒に徒歩で東京の夜景スポットを巡って、夜景や街の照明の解説をするという内容です。現地集合現地解散という仕組みも何やらワクワクする要因にもなったらしく、とにかくウェブでの募集開始からほどなくして満員御礼になってしまったほどでした。今回は3月8日と10日の2日間、私も含め12人の照明デザイナーが街歩き隊長に任命され、それぞれが得意とするエリアを担当いたしました。

ツアーは、2部構成になっており、18時からの早い夜のコースと、20時15分からの遅い夜のコースがあり、参加者は行ってみたい街や担当照明デザイナーのキャラクターからコースを選びます。申し込みができた後には、具体的な集合場所がメールで指示され、決まった時刻にその場所に集合するといった方式で、集合するや否や、簡単なガイダンスとイヤホンのついたレシーバーが手渡されるのです。これは隊長(=照明デザイナー)の解説を少し離れていても聞き取れるために必須のアイテムです。夜の街を7、8名が団子状態になって移動するのは不自然ですし、隊長の声も聞こえないだろうということで導入となったのです。



東京の夜の可能性

さてさて私はというと、20時15分スタートのコースの担当で、「東海林弘靖と行く裏表銀座ツアー」と題し、事務所を構えている銀座の街を一丁目から八丁目まで表通りと裏路地の照明スポットを巡り、最後は銀座のとあるバーに入って照明談議に花を咲かせる・・・という構成にいたしました。
それでは、そのツアーについて少しだけレポートさせていただきます。

(集合)
銀座一丁目、私が17年前に創業した奥野ビル(昭和7年竣工)に集合しました。参加者は8名ほかに事務方1名と取材のクルーが3名ほどになりました。まずは、コースの説明がなされ、間もなくイヤホンが配られ音声のチェックと共に注意事項の説明を行いました。このイヤホンですが、20メートル程度離れたところにいても耳元でしっかりと解説がきけるので好評でしたね・・・。

(秘密の路地へ)
さて、いよいよスタートすることになりました。銀座一丁目から八丁目に向けておよそ1時間のツアーなのですが、最初に訪れたのが「赤いランプが灯る秘密の路地裏」です。
この路地は昭和の初期から残るもので、幅1メートル、照度0.5ルクスの不思議な空間です。昭和初期に活躍した作家・永井荷風の『つゆのあとさき』という短編に登場する路地でもあると言われています。当時はこの路地の途中にカフェーの入口があって、そこに赤いランプが灯っていた・・・と小説のなかで詠われているのですが、そのことを知ってか誰かが赤い光を道に投光しています。この空間を通って銀座通りへ出ると、そこは100ルクスを超える明るさが待っています。およそ200倍の照度比を体験しながらツアーは進んでまいります・・・・。
 
(銀座のバーにて)
1時間のツアーを経て、たどり着いたのが七丁目のバーです。ほぼ満席状態を生み出しながら(本当はバーという場所には団体でいってはいけないと思いつつ、オーナーバーテンダーさんのご厚意に甘えてしまいました)ここで参加者との照明談議に花を咲かせることとなっておりましたが、席に座るや否や私への質問が飛び交い、大好きなフルーツカクテルを呑む暇を与えられない・・・そんな様子でありました。

お酒付きの概ね2時間半のツアーだったのですが、大変な盛り上がりでした。ひょっとしてこれって定番のナイトツアーになるのかもしれないなぁ・・・外国人向けの英語のツアーや路地裏ばかりを見るツアー、新しい建物を巡るツアー、高層ビルから見るツアーなどなど東京は夜こそが面白い!と改めて感じたのでした。

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PROFILE
東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に有限会社ライトデザインを銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。




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