Vol.32│ニューヨーク、3つの出逢い

絵の具に見たLEDカラーの確立

投稿日:2013,12,05
photo by かがみ〜

 

ウィンターイルミネーションの傾向

いよいよ12月になりました。街のあちこちでさまざまな色合いのイルミネーションが展開され、華やかな雰囲気に包まれております。LIGHTDESIGNのある銀座では、銀座通り(中央通り)を中心に「GINZA ILLUMINATION(ギンザ・イルミネーション)2013 ヒカリミチ 〜希望の輪〜」と題し、特別に開発したスペシャル・シャンパンゴールド色のLEDを使用したイルミネーションが12月3日より始まりました。シャンパンゴールドといえば、ここからちょっと足を延ばした丸の内の仲通りでも以前からシャンパンゴールドのイルミネーションを展開しています。

きっと「シャンパンゴールド」というのは、12月や華やかさをイメージさせるキーワードなのでしょう。今回はこのゴールド(金色)と光について考えてみたいと思います。





光はゴールド?


まず、最近のイルミネーションの流行としてシャンパンゴールドというのが多く見られるようになりましたが、実は正確に言うと「ゴールドの光」というのはありません。確かにそういう色の名前のLED電球が売られていますし、先にご紹介したようなイルミネーション企画でもシャンパンゴールド色という表現をよく使います。

これらは今までの白熱電球よりももうちょっと黄色い印象のLEDを、色としてゴールドと表現するようになったのでしょう。クリスマスになるとキラキラと光り輝く飾りつけが多いですから、イルミネーションもゴールドというネーミングがぴったりなのかもしれませんね。では一方、光り輝く金色の物をきれいに照らし出すにはどうしたら良いのでしょうか? 実はこの質問こそ、私が照明デザイナーとしてまだまだ修行の身であった頃に、当時の上司から投げかけられたクエスチョンだったのです。

photo by Tommy Wong




金を照らす

当時の上司は光工学というものを専攻されていて、照明デザインというよりも何ケルビン、何ルクスで照らすとこうなるということを専門にしていた方でした。“金色だからキラキラという感じでスポットライトのようなもので照らせばいいのではないかな?”と当時の私は考えたのですが、その答えは全く違っていました。

聞くと、まず金をいかにおごそかに見せるかを考えなくてはいけないというのです。そのためには白熱電球よりももう少し色温度を下げる必要があり、それは2600〜2700ケルビンくらいがちょうど良いのだそうです。この出来事は東京の両国にある回向院というお寺の、まさに金色に輝く千体地蔵尊を照らしたいという依頼によるものでした。(千体地蔵尊の写真はこちら→回向院名所案内

この金色の地蔵尊を照らすのに使ったのはミニクリプトンランプという小さな電球で、中に封入されているクリプトンガスにより断熱効果があり、100Wだけれども色温度は普通のシリカランプの2800ケルビンよりも低い2600ケルビンの光を放ちます。この時、実際に千体地蔵尊の部屋で色んな光源を使った照明実験を行ったのですが、例えば3000ケルビンのハロゲンランプだと白すぎて軽い印象になり、金色ではなくプラチナ色のように映ってしまうのです。そこから色温度をどんどん下げていくと、金の奥ゆかしさようなものがだんだん出てくるのです。しかし、さらに下げすぎると今度は赤い感じになりベタっとした印象になってしまいます。

ちょっとした波長のコントロールで映り方が変わって見えるとても面白い事象で、これを見たときは照明の深さを感じ非常に感動いたしました。金、ゴールドというのはあまり家の中に普通にある色ではありませんが、ちょうどこのクリスマスの季節は金の飾りもありますから、それを照らすとき調光を下げて、ぜひ試してみてください。きっと、ゴールドが良い感じに見えるところが見つかると思いますよ!

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PROFILE
東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に有限会社ライトデザインを銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。





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