Vol.80│よるの森の光

怖さとワクワク感が共存する場所
投稿日:2015,08,06
photo by Jeff Wallace

夏の思い出

8月に入り、夏もますます真っ盛り、休み中の子供たちには楽しい季節となりました。すでに45年も前の話になりますが、小学生の私は、地元のスポーツ少年団に入っておりました。そして、毎年この季節にはどこかの山の中でキャンプ合宿がありました。数十人の小学4、5、6年生と、10名ほどの大人たちとで2泊3日の大きなイベントです。山中のキャンプ場に到着したら、まずは、テントを張って居場所をつくります・・・。3日間そのテントで暮らすのですが、今でも記憶に残っているのが “夜の森”のイメージです。当時、普段の生活で森の中で夜を過ごすなんてことはなかったので、とても怖かったのを覚えています。

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Vol.79│お客様のものですから・・・!?

自分と相手を納得させる魔法の言葉
投稿日:2015,07.24
photo by PortoBay Hotels & Resorts

あのソムリエの言葉

このブログでは、ときどき私のお気に入りの言葉を紹介しておりますが、最近とても気になっているフレーズに、「お客様のものですから・・・」というのがあります。この言葉、以前から様々なところで耳にしていた言葉ですが、かの有名なソムリエの田崎真也さんのワイン教習用のDVDを見ていた時のことです。

ソムリエの資格試験の実技の中に、デキャンタージュというものがあり、その実技レクチャーでもこの言葉が出てまいりました。デキャンタージュとは、ヴィンテージワインなどの香りを立てることに加えて、オリ(沈殿物)を除く目的で、開栓後にワインをいったんデキャンタに注ぎ移すことで、オリがボトル側に残るようにワインを注ぎます。この時、あまりボトルにワインを残しすぎるのはNG、つまりお客様が飲む分量が減ってしまわないようにしなければなりません。すでにワインは「お客様のものですから」という訳です。

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Vol.78│カラーライティングの深化

光の色、もっとに細密に!
投稿日:2015,07.09
photo by Gerald Streiter

21世紀のイノベーション

青色発光ダイオードの実用化とその応用技術の進化により、21世紀以降、カラーライティングが世界中で大ヒットし続けています。LED光源をコンピューターでコントロールしてさまざまな色を発色させるという技術が世界を席巻し、メディアファサードと呼ばれる映像装置としての建築が生まれるようになりました・・・と、ここまでは、前回のブログにも記したとおりの復習です。

2015年、この一連のブームも一段落して、そろそろ本来の建築と照明の適切な関係が再構築される時代になってきたように思うのですが、最近の情報によれば、このカラーライティングのジャンルも更なる深化を遂げている・・・というのです。今回のブログでは、その辺の事情を掘り下げてみたいと思います。

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Vol.77│ひるです、よるです。

建築デザインのコンセプトと照明
投稿日:2015,06.26
photo by Heji

最近、気になった言葉

本日のブログタイトルは、「ひるです、よるです」とさせていただきました。なんだか、「あんです さんみゃく(アンデス山脈)」・・・みたいな軽快な音の響きです。実は、この言葉、最近、私の頭の中のかなりの部分を占めている大変重要なワードとなっています。その理由は、あるプロジェクトのプレゼンテーションでとてもシビアなご指摘を受けたことに事の発端がありました。それは、大きな超高層ビルの外観照明デザインのプレゼンテーションでのこと、「あなたは昼間の建築をよく見ていないのではないですか?」という、ちょっと厳しいご指摘を受けたのでした。

そんなことは断じてありません!私は、光で夜の飾りをつけようとしているのではありません。建築のデザインの特徴を見極めて、夜間にその姿が暗闇に埋没しないように、建築デザインの特徴に光を与え、夜空を背景に自然に浮かび上がることをイメージしています・・・・。と弁明したものの、ひょっとしたら・・・、確かに・・・、もう一度・・・、昼の建築のデザインを見直し、再考すべきかもしれないと考えました。建築の昼間の時間と夜の時間をどう分析し、構築すべきか? 今回はそんな話題についてお話ししたいと思います。

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Vol.76│GINZA裏路地散歩のすすめ

再開発プロジェクトから見える未来
投稿日:2015,06,11

テレビの企画で

先日、NHKのとある番組ディレクターから番組に出演してほしいという依頼がありました。その番組というのは、NHKの海外向け放送サービス「NHKワールド」の中で放映されている「TOKYO EYE 2020」という番組でした。番組の前身は、クリス・ペプラーさんの司会で十数年続いてきた「TOKYO EYE」で、この春から番組タイトルに2020を加えて内容も刷新しているというのです。

2020、そう、いま東京は、オリンピックに向けた街の整備と同時に、海外から観光客の誘致にも積極的です。そして、銀座は東京観光の目玉のひとつで観光ガイドでもさまざま紹介されているのです。番組では、その銀座の面白さを深堀するような、街のバックステージツアーを行うという企画。そして、その案内役として出演してほしい・・・というのが、今回の依頼だったのです。

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Vol.75│東京の新しいカタチ

再開発プロジェクトから見える未来
投稿日:2015,05,28

新スポットオープンめじろ押し!

前々回のブログで、池袋・西武百貨店に出来た新しいスポット「食と緑の空中庭園」をご紹介いたしましたが、実はこのプロジェクトの他にも、東京で最近オープンしたプロジェクトがいくつかございます。ひとつは品川に、もうひとつは世田谷区二子玉川に、そしてもうひとつは練馬区の大泉学園にそれぞれオープンいたしました。この3つのプロジェクトに共通しているのはどれも長い年月をかけての再開発プロジェクトだということです。今回はこれら再開発プロジェクトのご紹介と共に、そこから見えてくる東京の未来を覗いてみたいと思います。

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Vol.74│SF映画と未来の照明

名作に示された未来の光環境
投稿日:2015,05,14

もう一度見直したい映画

今年3月に開催された照明の総合見本市「ライティング・フェア2015」ですが、こちらのブログでご紹介した展示やトークショーも、おかげさまで大盛況のうちに終わりました。本日はこの時に行ったトークショーの中でなかなか面白かったコンテンツ、「あのSF映画で見た!? 未来のあかりとコレカラ」でご紹介した名作SF映画2本を、光演出の解説と共にご紹介したいと思います。

2つの映画作品とは、スタンリー・キューブリック監督の「2001年 宇宙の旅(英:2001: A Space Odyssey)」と、リドリー・スコット監督の「ブレードランナー」です。前者はタイトルのとおり2001年を舞台にしているので、現在の2015年から考えるとすでに過去の話のようですが、これが製作されたのは1966年、その時は、37年後にあたる2001年はとてもとても輝かしい未来の世界だったのです。残念ながら現実は、思い描かれた世界ほどのスピードでは進化しませんでしたが、逆に言うと今でも楽しめる近未来のお話ということができるでしょう。さて、それではこれらの映画の中に光の未来をみていくことといたしましょう。

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Vol.73│宵を待ちたいルーフトップガーデン

気鋭のマリアージュで生まれた素敵な空間
投稿日:2015,04,30
photo by LIGHTDESIGN INC.

風が心地よい季節に

こんにちは。東海林弘靖です。日の入りの時間もだいぶ遅くなり、夜の散歩も肌に心地のよい季節となりました。そして、日本はゴールデンウィークのまっただ中です。今日は、大盛況のグランドオープンを昨日迎えたばかりのおすすめスポットをご紹介したいと思います。それは、とあるデパートの屋上の広場空間なのです。

ひと昔ならば、デパートの屋上と言うと、子供向けの遊具が設置されたり、ペットショップがならんでいたりと、遊園地のような空間イメージでした。また近年は、昼間にサラリーマンやOLさんがお弁当を食べたりするようになり、デパート側もそれに対応して緑化やカフェなどの機能を追加し、素敵な空間に生まれ変わっているようです。そのような流れのなかで、私も最近、デパートの新しい屋上空間づくりに参加させていただきました。これが参加したメンバーやテーマなどを含め、なかなか面白いプロジェクトだったのです。

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Vol.72│“省エネ”と照明デザイン

魅力的な省エネとは?
投稿日:2015,04,09
photo by Toshio Kaneko

嬉しいニュース

先月6日、私はとあるシンポジウムのステージに立っておりました。それはライティングフェア2015ライティングステージでの出来事で、この日この会場で省エネ・照明デザインアワードのシンポジウムが行われたのです。じつは、2013年に私たちが参加して完成した「MARK ISみなとみらい」の照明が、商業・宿泊施設部門で大変名誉あるグランプリを受賞いたしました。

この「省エネ・照明デザインアワード」は、環境省が2010年からスタートさせた公募型の賞で、「省エネ照明化」と、「魅力的な空間作り」の両立の促進を目指して行われています。商業・宿泊施設部門のほかに公共施設・総合施設部門、まち、住宅、その他部門の賞があってそれぞれにグランプリ1点、優秀賞6から15点が選出されています。本日はこの話題と共に、省エネというテーマと照明デザインがどう関わっているかを考えてみました。

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Vol.71│アナログ回帰と未来の照明

見えない部分が空気感をつくる
投稿日:2015,03,26
photo by assillo

今、レコードが人気?

近ごろ耳にしたニュースですが、アナログレコードが人気なのだそうです。最近はスマートフォンなどの携帯端末を使って音楽をインターネットからのダウンロードやストリーミングで聴くことが主流となり、そのあおりを受けてCDの売り上げが下がっていくなか、逆に昔の音楽メディアであるレコードの売り上げは上がっているというとても不思議な現象です。

2014年の調べでは、アメリカではレコードの売り上げが前年比の1.5倍、日本ではなんと2.66倍にも増加しています。また、昨夏には大手レコード販売店のHMVが渋谷にレコード専門店をオープンさせたり、アメリカではレコードのプレス工場を据えるインディーズレーベルが登場しているそうで、なにやら静かなブームを起こしているのです。関連の記事を読むと、レコード人気再燃を支えているのは往年のファンやコレクターと思いきや、そうではなく、CD世代以降の若者たちとありました。

なんだか、面白そうなニュースではありませんか! 私は照明デザイナーですから、この話題を、照明業界に重ねてみると、LED時代の白熱電球の存在と置き換えても面白いのではないか?と考えます。そこで今回は、アナログ回帰という視点で照明のことを考えてみたいと思います。

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PROFILE
東海林弘靖 / Hiroyasu Shoji

1958年生まれ。工学院大学・大学院建築学専攻修士課程修了。
光と建築空間との関係に興味を持ち、建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査、アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続けている。2000年に有限会社ライトデザインを銀座に設立。超高層建築のファサードから美術館、図書館、商業施設、レストラン・バーなどの飲食空間まで幅広い光のデザインを行っている。光に関わる楽しいことには何でも挑戦! を信条に、日本初の試みであるL J (Light Jockey)のようなパフォーマンスにも実験的に取り組んでいる。






Vol.71
Vol.71 アナログ回帰と未来の照明

Vol.72
Vol.72 “省エネ”と照明デザイン

Vol.73
Vol.73 宵を待ちたいルーフトップガーデン

Vol.74
Vol.74 SF映画と未来の照明

Vol.75
Vol.75 東京の新しいカタチ

Vol.76
Vol.76 GINZA裏路地散歩のすすめ

Vol.77
Vol.77 ひるです、よるです。

Vol.78
Vol.78 カラーライティングの深化

Vol.79
Vol.79 お客様のものですから・・・!?

Vol.80
Vol.80 よるの森の光


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