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こんにちは、萩原シャッキーです。
天気のいい初夏の夕刻、潮の香りに誘われて、ぶらりと自転車をこいでやって来たのは江東区豊洲。
波止場に響く汽笛が私を呼んでいる、鼻の向くまま気の向くまま…というのはさておき、なぜ豊洲にやって来たかというと、ここには以前完成した屋外の現場があるのです。さっそく見に行ってみましょう!
現場は豊洲駅から10分程歩いた所にあるアーバンドックパークシティ豊洲。ここは石川島播磨重工業造船所の跡地に建てられた総戸数1481戸の大規模高層集合住宅で、2008年4月に完成しました。
2棟の超高層集合住宅の足元には美しいランドスケープが広がっています。ランドスケープデザインは団塚栄喜さん(※1)が代表を務めるEARTHCAPEが手掛けています。照明デザインは私達LIGHTDESIGNです。
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24Sites 配置図
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敷地内には日本の24節気をデザインコンセプトとし、レジデンスの中に24の庭(24sites)がつくられています。例えば[立春]や[秋分][寒露]といった名前が付けられていて、それぞれ異なり見応えがあります。
今回ご紹介するこだわりディテールは24sitesの内の1つ[小雪](※2)という庭の中にあります。(図参照)
勾配が付けられた石の中に立つイチョウと楓の間に静かに光が落ちていて実に美しい風景です。今は6月なので青い葉が繁っていますが、小雪の時期になると赤と黄色に紅葉した鮮やかな落葉が白い石の上に広がり、より劇的な風景を作ります。
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| 「小雪」の庭 |
ところで2本の木の間にある光はどこから来ているのか、写真を見て分かるでしょうか?実はなんと、近くの木に照明器具を直接打ち付けて設置しているではありませんか!!!
通常このような屋外で高い場所から下を照らす場合は、近くにポールのような物を立ててその上部に照明器具を取付ける事が多いです。でもあくまで「光が主役で器具は黒子」、「仕掛けを見せない」ことが建築照明デザインの極意。光と影がつくり出す幻想的な空間の中で、ポールという「仕掛け」は絶対に見せたくないという強いこだわりがあります。
では、光がどこからともなくやって来て地面に美しい影をつくるにはどうすれば良いのかと考えに考えた末、木に照明器具を直接設置する方法が採用されました。この手法であれば光が主役で器具の存在は目立ちません。「昼間は姿を隠し、暗くなると光だけが現れる」ことこそ実に理想的な光なのです。
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器具は幹に釘で4点でしっかりと
留められています。 |
もう一度言います。(ビシッ!)器具は黒子で主役は光。スポットライトが当たっているステージ上で仕掛けは見えてはいけないのです!!!
とはいえ、初めてみる樹木版ピアス式(と勝手に名付けました)を見て少なからず驚きました。さっそく帰って調べてみると、ありましたありました!海外のランドスケープ照明の本やカタログでは数ある手法の一つとして紹介されています。
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Moyer氏の著書
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例えば、ランドスケープライティングの第一人者としてアメリカで活躍するJanet Lennox Moyer氏(※3)(以下Moyer氏)の著書「The Landscape Lighting Book」でこの手法を見つけました。ここでは、ディテールや設置方法が図と共に紹介されているだけでなく、木への影響を考慮して取付け用の釘やねじの素材にまで言及しています。さらに注目すべきは
「…Never wrap a wire,tape,or any other material around a tree trunk or branch.…」
という解説で、「幹や枝にワイヤー等を巻き付けて器具を取付ける事は、成長の妨げになるので決してやってはいけない」とMoyer氏は語っています。 さらに、ライティングデザイナーが木に登って器具を取付けている写真もあり、そこには
「…the designer isn’t afraid of heights.…」
という言葉が添えられていました。逞しいなあ。(笑)(左図参照)
他にも、HK LIGHTINGというアメリカの照明器具の会社のカタログには、ピアス式専用の取付け金具というパーツもありました。(右図参照)
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足場の悪い樹木の上での取付け作業風景
(The Landscape Lighting Book)
より抜粋 |
HK LIGHTINGのカタログで見つけたピアス式専用の取付金具 |
このように海外では普通に採用されている手法という事が分かりホッとしました。ここまで分かったら、もっと詳しく知りたい!ということで担当者に聞いてみましょう。
■ 担当者談
照明器具を木に取付ける方法として、始めは「幹にバンドのようなもので巻く」という手法を考えた。
そこで木の専門家に話を聞いたところ、バンド式は確かに幹を傷付けずに設置可能だが、一方で樹木は成長し続け幹は太り1年で幹周が10cm程度大きくなっていく(樹種にもよる)。すると幹はバンドによって締めつけられていくので、この方法は不向きだという事が分かった。
樹木の内部構造は芯(樹木そのものを支える)があり、樹皮(表面)に近い部分に根から吸い上げた水分や養分を上げたり、それらを樹木全体に行き渡らせたりする辺材部がある。辺材部は樹木の生命線ともいえる重要な部分で、バンドでここを締めつけると成長を妨げ弱る原因になってしまう。
一方で、ピアス式は幹周をぐるりと周る辺材部に何点かピンを打つ事になるが樹木へのダメージはバンド式よりもはるかに少なくて済む。もちろん木の太さや打ち込むピンの本数を十分に考慮し、検討が必要だが、豊洲の事例のように数本程度であれば問題は無いであろう、という事だった。
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なるほど!総合的な状況判断の結果、ピアス式を採用したんですね。「昼間は姿を隠し、暗くなると光だけが現れる」という強いこだわりの裏には、光のみならず取付ける木への入念な検討をもなされていたのです。
見た目にはちょっと痛そうと思ってしまうのは私自身がピアスをしていないせいかもしれません(苦笑)
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| 現在は青々と葉が繁っています。 |
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Moyer氏との2ショット。
右がMoyer氏、左が私です。
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余談ですが、先日Moyer氏とお会いする機会があったので、この樹木版ピアス式の事について直接伺ってみたところ、「ゼッタイに木にワイヤーやバンドをしてはダメよ!スクリュー(ねじ)やネイル(釘)を使うべき」と、私も釘を刺されてしまったのでした(笑)
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