東京駅の八重洲口を右へ出た所にガラス張りの超高層ビルが完成した.このビルは,昼間は少しグリーンがかったガラスが色温度の高い太陽光を受けて美しくそびえ建っている.夜間は,ビル全体がガラスでできた大きな箱のようにオフィス階スパンドレル部分も一様に光を湛え輝くようになっている.鑑賞する分にはよいが,よく考えてみると夜間にガラスの建築を美しく光り輝かせるのは,並大抵のことではない.オフィスビル,しかも賃貸スペースを擁する建築では話はさらに簡単ではない.なぜなら建築が美しく光り輝くことを阻止しようとする数々の条件があるからだ.まず,日本の消防法には,各階の天井とその上階の床下間を層間区画しなければならないという規定がある.この法規によって床から天井までガラスでつくった建物であっても,スパンドレル部分が光らない結果になる.次にコストの制限がある.層間区画を光らせようとすれば,そこに仕込まれた光源のメンテナンスのために点検口が必要になる.防火区画された点検口を小刻みに設置するのは,中にしまい込む照明器具以上にコストがかかってしまう.代案として,照明の先端技術を利用してメンテナンスのかからない手法をとることがあるが,積み重なるすべての層間にこの技術を施すとなると,コストが一気に跳ね上がる.そしてさらに運用の問題がある.幸いにして層間区画に光を与えられたとしても,すべての階の照明器具を一斉点灯しなければ,ガラス全面が光る箱は成立しない.入居者が毎日照明を点灯してくれるかどうか,使っていない役員室は点灯しないかもしれない…….そんなことをいちいち考えると,光るガラスの建築をつくりたいという意志も和らいでしまいそうだ.しかし,これらの難関を乗り越えて,この建築が光り輝くのは,夜間に光るガラスの建築をつくることを強く願ったオーナーと,どんな難関にも不屈の魂で臨んだ建築家の徹頭徹尾の意志と実行力の賜物である.その結果,私たちは21世紀を少し駆け出したところで光の衣装をさりげなく着こなした美しいガラスの建築を迎えることができた.

照明の先端技術
光源の先端技術として発光ダイオード,無電極管などがある.これらは,長寿命あるいは発光効率の高さなどにおいて建築照明への応用が期待されている.

徹頭徹尾
「朱子全書・学」
最初から最後まで.頭から尾まで突き通すという意.
[三省堂 故事ことわざ辞典より]

パシフィック・センチュリー・プレース
建築設計|日建設計・竹中工務店JV
外観照明基本設計|LPA
外観照明実施設計|LIGHTDESIGN INC.
撮影|2001年11月20日18:43